東大阪の家
2025.8.22 土地探しから始まる家づくり
家づくりは、図面の前にまず「土地」と向き合うことから始まります。
今回も近隣エリアでいくつもの土地を見て回りました。広さ、道路、周辺環境、そして価格。
理想に近づけば予算が合わない。予算を優先すれば何かが足りない。実際に現地に立つと、その難しさを肌で感じます。
それでも、条件に合う可能性のある土地を一つひとつ丁寧に提案し続ける。
ただ情報を並べるのではなく、
この土地で本当に家づくりが成立するのか?法規はどうか?将来の暮らしはイメージできるか?そこまで踏み込んで考えることが大切です。
更地に立ったあの日。まだ何もないこの場所に、これからどんな暮らしが生まれるのか。
土地探しの苦労があるからこそ、その後の設計提案にも重みが生まれます。

この後に、価格や条件の合う土地を見つけました。
面積は希望より少し少ないですが、設計の提案によってはより良い建物になるとの提案もあり、
設計の専門家である、建築士の設計コンペの提案を受けてみる事にしました。
2026.1.31 設計コンペ ヒアリング当日
プレゼンテーションの2週間前。
この日は、お客様のご自宅でヒアリングを行いました。

5社の設計事務所にお集まりいただき、弊社で事前に整理したヒアリング資料をもとにスタート。
お客様のご要望や暮らし方、これまでのお話をまとめた資料を、当日全員に同じ条件でお渡しします。
まず、建築家の皆様には、その資料を読み解く時間を取っていただきます。
同じ時間。
同じ資料。
同じ情報量。
ここからすでに、設計コンペは始まっています。
資料を読み込んだ後は、お客様との質疑応答の時間を約1時間半。
図面はまだありません。
あるのは、言葉と想いだけ。
どこに本質があるのか。
何を優先し、暮らしのどの部分を設計の軸にするのか。
建築家それぞれの視点が、この時間に表れます。
この日は東京から伊住さんもZoomで参加。
画面越しではありますが、同じ資料を手元に置き、真剣に耳を傾けてくださっていました。
プレゼン当日は対面でご一緒できるとのこと。
その再会もまた楽しみの一つです。
設計コンペは、
①ヒアリング日程とプレゼン日程がまず合うこと。
②ヒアリング当日に同じ資料を配布すること。
プレゼンまでの期間はわずか2週間。
通常であれば、もっと時間をかけて深める内容を、
限られた時間の中でまとめ上げていただきます。
そして当日は、1社30分という持ち時間。
同じ条件下で、
どこまで施主様の想いを汲み取り、
どんな答えとしてプランニングするのか。
そこに、この設計コンペの面白さがあり、同時に難しさがあります。
施主様にとっては、これから始まるプレゼンテーションへの期待の時間。
そして、何度もこの場に立ち会っている私にとっても、毎回新鮮で、毎回楽しみな時間です。
きっと5つの答えはまったく違う。
その違いこそが、設計コンペの価値だと私は思っています。
2026.2.14設計コンペ プレゼンテーション当日
2週間前のヒアリングを経て、いよいよプレゼンテーション当日を迎えました。
同じ敷地。
同じご家族。
同じ条件。
それでも、建築家が変わればここまで答えが違うのか?!
模型と図面を前にして、改めて設計の奥深さを実感した1日でした。
①しま建築工房 光と風を取り入れる星屋根の家

建て替えに伴いセットバックしなければならないという条件。
この制約をどう活かすかが、設計の出発点でした。
強調値の中で、その制限を逆手に取る。
1階をしっかりとまとめ、2階にLDKと和室を配置。
さらにロフトとフリースペースで光を感じる構成。

星屋根の形状を操作し、高い位置から光と風を取り込む計画です。
今回のコンペは「駐車場をつくるか、つくらないか」という大きな選択肢がありましたが、駐車場なしのプランを提案。
外干しスペースを設けない代わりに、浴室乾燥機など設備で対応する考え方でした。
敷地の制限を前向きに受け止め、コンパクトな中で明るさを最大化する。
ヒアリングを丁寧に拾い上げた、堅実なプランだと感じました。
②谷口弘和設計室│HTA 日常とだんだんをつなぎ家

この敷地にとって本当に最適な形は何か。
さまざまな形状をスタディしたことを説明されていた姿が印象的でした。
その上でのプラン。

奥にスペースを設け、そこから光を取り込むために、建物を道路側ぎりぎりまで寄せる構成。
結果としてLDKを広く、明るく確保する計画です。
動線は一筋縄ではいきません。
あちこち回遊する必要がある部分もありました。
けれど、それも含めて建築家ならではの挑戦。
敷地の広さを最大限活かそうとした、思い切りのあるプランでした。
理論と情熱の両方を感じる提案。
この土地に対する真剣さが強く伝わってきました。
③梅田武洋建築設計事務所 寒居

タイトルは「寒居」。
性能と暮らしを両立させるという強い意志を感じました。
玄関を斜めに振って駐車場を確保。
外観にリズムが生まれ、街並みに対しても表情のあるファサード。

内部は、なるべく広く。
階段の壁をアールにし、空間にやわらかさと楽しさをつくる。
寝室の窓からはシンボルツリーを望める構成。
スキップフロア的な要素も取り入れ、断面で遊ぶ。
収納を工夫し、なるべく無駄な通路を減らす設計。
空間構成を楽しませる提案でした。
④一級建築士事務所 KNOOOT株式会社 日だまりを囲む屋上テラスのある家

会社名の由来から説明が始まったのが印象的でした。
家族を結ぶ結び目のような存在でありたい、という姿勢。
このご家族にとってのキーワードは「家族」。
そこを軸にプランが組み立てられていました。

ロフトと屋上テラスを組み合わせた構成。
前面を斜めに振り、軽自動車が停められる駐車場を確保。
斜めのデザインが街並みに動きをつくり、
屋上ロフトは居室というより、屋上へ出るための光の装置。
1階と2階の間にロフトを設けるなど、他社とは明確に違うアプローチ。
暮らし方のストーリーを描こうとする設計でした。
⑤MIAアーキテクツ

前面道路側に建物を少し引き、駐車場を確保するプラン。
コンパクトな家ながら、広い玄関土間。
1階に寝室と子ども室、2階にLDK。
2階のLDKはアイランドキッチン。
水回りもすべて2階に集約し、上下移動を最小限に。

建物形状をできるだけ四角にまとめ、コストダウンにも配慮。
合理的で現実的な設計です。
印象的だったのは、アイデアの細やかさ。
壁の代わりになるキャスター付きの移動家具。
将来ロフトをつくれるよう、あらかじめ梁を設置。
ロフトへ上がる家具階段もキャスター付き。
その背面に大きな鏡を設ける工夫。
何とか要望をすべてこのプランに落とし込もうとする熱量を感じました。
全体を通して
同じ敷地から生まれた、5つのまったく違う答え。
光、形状、断面で遊ぶ、家族時間を描く、合理性を極める。
正解は1つではありません。
施主様が
「こんなに迷うのは贅沢ですね」
とおっしゃった言葉が、すべてを物語っていました。

設計コンペは図面の完成度を競う場ではありません。
この人と未来をつくりたいと思えるかどうか。
ここからは選ばれた一案を、さらに磨き上げていく工程です。
あの日感じた真剣さと熱量を超える家を、
必ず一緒につくり上げます。